「相続登記が義務化!違反には罰則!」
令和6年4月1日からついに相続登記義務化が施行!そのままにしておくと罰金が科せられます!
皆さんもテレビや新聞で見たり、聞いたりしたことと思います。初めて聞かれた方は唐突になんだこれは!と思われたことでしょう。
このコーナーでは国が国民に「義務化」を迫った理由。
法律・ルールの内容。そしてどうすればいいのかを分かり易く説明します。
目次
相続登記義務化の法律が決定
国民に義務や罰を課すには法律によらなければなりません。
2021年4月22日、今回の相続登記の義務化の法律となる民法・不動産登記法の改正法が成立しました。
民法はご存知の通り、我々の生活となじみの深い法律です。不動産登記法とは字の通り不動産を登記するときのルールを定めた法律です。
法律は決定したらすぐに従わないといけないかというと、そうではなく「施行」がされて初めて効力を発揮します。今回の義務化の法律は2024年4月から施行されます。ただし、施行が近づくと、相続登記の駆け込みが膨大な量になるので、法務局も司法書士も、さばききれなくなりますので、できるだけ今から相続登記を完了させておくことをお勧めします。
義務化の内容
では何が義務化されて、違反するとどうなるのかをみていきましょう。
1.相続登記の義務化と罰則⇒3年と10万円
これが一番重要です。
相続によって土地や建物の所有権を取得した場合、そのことを「知ったとき」から3年以内に登記しないといけません。「相続したとき」ではなく「知ったとき」から3年です。
そして正当な理由がないのにも関わらず、相続登記を怠った時は、10万円以下の過料を求められます。
そして一番厄介なのは、相続登記が義務化される改正は、施行日に相続登記未了となっている土地・建物も対象になるということです。つまり、過去に相続が発生しているが「どうせ売らないし、面倒だし、登記費用がもったいないし」と相続登記していない人はいきなり10万円以下の過料に科せられる可能性がある、ということです。
私がこの過去の相続が一番、大変だと思っています。
2.所有者の住所等を変更した時の変更義務化 ⇒2年と5万円
所有者の氏名や住所に変更が生じた場合は、変更があった日から2年以内に申請しなければなりません。変更登記を怠った時は、5万円以下の過料を求められます。住所移転しただけなのに、それをほったらかしにしただけで過料の制裁がきてしまいます。
このように今回の義務化は相続登記だけでなく、住所を変更しても、その変更登記をしないと過料に科せられる、これまでに例を見ない厳しい法改正なのです。
この法律改正が決まった時は新型コロナウィルスが一番猛威を奮っていた時期と重なっており、これだけインパクトの強い法改正にも関わらず、新型コロナウィルスの話題のために余り、世間ではクローズアップされなかったかも知れません。しかし、我々司法書士からすると、何十年或いはそれ以上に1回あるかないかという、ものすごい出来事なのです。
なぜ相続登記が義務化にされることに?
ではなぜ、こんな制度ができたのでしょうか?それは一言でいえば所有者が分からない土地が驚くべき数で発生しているからなのです。
この土地を「所有者不明土地」といいます。
「所有者不明」とは、どこの誰のものか分からないというだけでなく、所有者の相続人がはっきりわかっていないことも「所有者不明」扱いになっています。
古い登記のままの土地には、そのときの所有者しか書かれていないため、現在の所有者はその相続人ということになります。
しかし、何代も相続登記をせずにほったらかしにしている場合、また子供のいない被相続人の場合、相続人全員を探し当てるのが、とても難しいことになるのです。
このように、相続人全員が判明しない土地も「所有者不明土地」なのです。
いざ、土地を活用するために売ろうとしても、銀行からローンを組むために抵当権を設定しようとしても、相続登記をしっかりと入れないと売れませんし、抵当権も設定できません。いわば、所有者不明土地に一回なってしまったら、その土地は活用されないのです。
国土交通省による平成29年度調査では、所有者不明土地は全国の土地の約2割に上り、九州全土の面積を上回るとされ、その面積は今後さらに増大すると見込まれています。近い将来北海道の面積にも迫ると言われています。いかに国益にとってもこれが不利益になることが分かると思います。
また所有者不明土地は、適切な管理がなされず放置されたままになっていることが多く、災害や事故のリスクが高まっています。
今回の相続登記義務化の法案は「所有者不明土地」に陥ることを予防する対策として決定されたのです。
相続登記のやり方
以下には相続登記の中でも、一番手間がかかる古い相続についてやり方を書いてみます。
例題
例えば、登記簿の所有者が祖父になっていて、昭和の初めごろの登記だった。
祖母も祖父の後亡くなっていて、その後、祖父母の子、あなたから見るとお父さんもなくなっていたとしましょう。
一番大変なのは亡くなった人の戸籍集めです。上記の例だと、祖父死亡⇒祖母死亡⇒父死亡となっています。
さて、戸籍はどれだけ集めないといけないでしょうか?
①:祖父の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍
②:祖母の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍
③:父の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍
④:相続人全員の戸籍
上記の戸籍を全部集めないといけません。
戸籍は移転していた場合、その市町村でしか取ることができません。古い時代の方の中には、住所変更するたびに戸籍を変更する方もいまして、人生のうちに何度も本籍を変えています。こうなると、その市町村に行くか、郵送で取得しないと戸籍は取得できません。
手間暇が半端ありません。そして何より、古い戸籍は、ほんとに読めない!
私も仕事柄、多くの戸籍を見てきていますが、ほんとにミミズがはったような字があります。また、何をひけらかすのか、達筆すぎて何を書いているのか読めません。こういう戸籍に当たるたびに、字を虫眼鏡で見ながらののしっています・・。
「公務員のくせに、もっと住民のことを考えろ!」と。
上記のケースだとおおよそ、期間にして半年から1年、戸籍の数は20から30通は下回らないと思います。費用も郵送費含めると数万円かかります。相続人泣かせでしかありません。
次の難所が相続人への連絡です。
例を変えて、例えば登記簿の所有者に子供がいなかった場合です。
この場合の相続人は通常、配偶者とその兄弟姉妹です。
そして古い場合、兄弟姉妹も亡くなっていますので、その兄弟姉妹の相続人が所有者の相続人になります。このような場合、相続人の数は膨大になります。過去、全部で40数人の相続人が判明したというケースもあります。
こうなると、依頼してきた所有者の配偶者は所有者の兄弟までは知っていても、その相続人までは知らないケースがほとんどです。そしてこのような場合、相続人全員で遺産分割協議をして誰か1人(通常配偶者)へこの土地を相続登記することになります。
相続人全員の共有とすることもできますが、そんな土地、なかなか売れませんので、通常1人の単独相続とします。この時に遺産分割協議書には実印押印と印鑑証明書が必要ですので、この同意のための連絡が大変です。相続を知らなかった相続人にすれば寝耳に水だし、少しでも兄弟間で仲が悪いと押印を拒否されかねません。そうなると遺産分割協議はできなくなくなります。
3つめの難関
相続登記の際、住民票の除票なるものが必要です。死亡したことの証明は戸籍で分かるのですが、登記簿に書かれている所有者と亡くなった人が同一かどうかは、住所と氏名で判断します。
古い登記簿の所有者の住所を見ると、その方の亡くなったときの最後の住所と違うことが非常に多くあります。こういったときに活躍するのが「戸籍の附票」と呼ばれる書面です。これはこの方の過去の住所が時系列に書かれている書面です。ここに、過去の住所として登記簿の住所があれば、めでたく登記簿の人と亡くなった方は同一人物だと証明できるのです。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
令和以前の戸籍の附票の保存期間は5年でしたので、古い時の住所は記載されていません。今は法改正されて150年間は保存されます。
⇒極端すぎるやろ!今までは短すぎるし、今度は長すぎじゃないかい!
ではどうするのか?
これは司法書士の色んなテクニックがあるのですが、一般の方には難しいと思われますのでスペースの都合上、割愛します。
とにかく、このような事態になったら司法書士に問い合わせるべきだと思います。
ざっと、大物の難所だけでもこのように3つありますので、一般の方がご自分でやられるのは困難だと思います。
相続登記かかる費用はいくら
当事務所へ相続登記を依頼した時のおおよその費用を記載します。
前述した住所が繋がらないとか、相続人への連絡などが必要な場合は別途、費用がかかりますのでご了承ください。
参考
(1)登録免許税(登記するために国へ払う税金)
不動産の評価額 × 1000分の4 (1000万の評価額なら4万円)
(2)司法書士による登記申請代理報酬
土地と建物1つずつで合わせて 77,000円(消費税込み)です。
同一管轄内でかつ、取得する名義人が同一なら追加で1不動産あたり
プラス11,000円(消費税込み)の加算となります。(3つ以上は要相談)
(3)戸籍謄本、住民票の代理取得
①戸籍謄本又は住民票1通あたり、代理取得報酬1,100円+役所での発行手数料
(除籍謄本なら750円等・郵送は定額小為替のためプラス200円)
②愛知県外の場合、郵送にて取得するための郵送代往復1,000円
(4)その他 実費相当
①登記申請のための交通費又は郵送費
②登記事項証明書
(5)遺産分割協議が必要な場合
遺産分割協議書作成費用 11,000円~
相続登記に関する良くある質問・疑問
そもそも相続されていない不動産はどうやって探すのですか?
まずは固定資産税の納税通知書を確認してください。その通知者が被相続人宛で来ている場合は相続登記がまだされていません。
但し、この通知書は相続人の1人に送られるだけですので、自分のところへ届いていないとわかりません。この場合は、相続人の住んでいた市区町村役場の固定資産課税台帳を確認してください。市区町村役場の資産税課へ行き、名寄帳(なよせちょう)の交付申請をすることで、その市町村にある被相続人が所有している不動産を一覧表にした書類を交付してもらうことができます。
その他、実家などに登記済書(権利書)があった場合、その登記簿謄本を取得して所有者が誰なのか確認してみてください。
依頼する場合に書類は何を持っていけばいいですか?
まず最低限必要なのは相続人である依頼者の戸籍です。ここから順に遡って調査をしていきます。
戸籍取得も大変でしたらご依頼いただければ司法書士が職権で取得します。
相続人を全然知らないのですが、今回の相続登記の必要や印鑑をもらうことについての説明などもお願いできるのでしょうか?
はい、お受けします。
まったく面識のない相続人に藪から棒に印鑑を押せなんて迫ると、拒否されることもありますので、当事務所が手紙等を事前に出して、しっかりと説明をして、同意してもらえるよう努力します。
建物が表題登記のままでほったらかしになっています。
しかも所有者欄に住所が書かれていません。相続登記なんかできるのですか?
登記には物理的な面積や材質などが記載された表題部登記と、法的な権利が記録される権利部で成り立っています。古い建物などには所有者欄に住所の記載がなく、氏名だけの場合があります。
この場合、その建物の所在地を所有者の住所として権利部の登記をすることができます。
相続登記は石川司法書士・行政書士事務所へお任せください。
ご相談は無料です。